第2章 a hostage

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   「このチート野郎が…」  部屋の最も高い段に位置するジュピテル。数段下へと退避したパラスを見下ろす視線は、同じ平面にいるよりも、必然的により見下したものとなる。  いや。位置的な問題ではないだろう。実際に、心の底から見下しているのだ。  「お前。『以前は』システム側の担当だった……とか言っていやがったが、嘘だな」  「……嘘じゃないさ」  パラスの口調が、男性のソレへと変じていた。苦々しさを多分に含んだ声へと。  「かつて私は左端……いや当時は右端でしたが……と共に、確かにシステム側の担当として働いた時期があります。が、今は、彼と同様、その務めはもう辞している」  「へぇ……じゃぁ、何でお前は、今、『転移コマンド』を使えたんだ?」  ジュピテルの挑発するような口調に、しかし、パラスは答えない。  いや。もはや彼女をパラスと呼び示すことは適切ではないかもしれない。  いや。それどころか、そのパラスだった人物を「彼女」という人称代名詞で呼び示すこと自体が不自然のように思われる。  だから、ジュピテルは質問の答えを待つことなく言った。  「気色悪ぃから、さっさと化けの皮を剥がせよ。それとも、お前ぇには、そういう趣味でもあるのか?……ま。今時は、別に珍しくもねぇが……その顔は使うんじゃねぇ」 ・・・
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