第2章 a hostage

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   呆れたような口調で言ったのではない。ジュピテルのその言葉には、激しい怒りの色が滲んでいた。  「お前ぇにパラスの何が分かる?……パラスはな、あんな喋り方はしねぇし、領土争奪戦がどうのだなんて問いを口に出すこともありえねぇ」  「驚きましたね。パラスなど、所詮、アナタの元を去ったユノの穴埋めに過ぎないでしょうに。そのように個性としてしっかりと認識しているとは……」  「テメェ如きが、パラスを呼び捨てにするんじゃねぇ!!……ユノもだ」  「これは失礼しました。しかし、私の呼び名が、また『テメェ』に戻ってしまいましたね。これは……残念。本当に怒らせてしまったようだ」  「テメェの呼び名なんざぁ、どうでもいいんだよ。どうでも。ジウの野郎だろうと、クリエイターだろうと、テメェは化けられねぇ。ましてやパラスやユノになんて、なれるわけがねぇだろ。形を少しばかり真似たところで、全然別物にしか見えねぇぜ」  「くっ。そんなハズ……完全にフォルム・オブジェクトをコピーしているというのに」  「中身が違ぇんだよ。中身がな。同じ人間だって、その時の心の有り様によって全然違う表情になるなんてぇのは当然だろうが」  「いや。私は、誰よりも他人の心を読むことに長けている。アナタたちのような戦闘馬鹿とは違ったその力で、私はトップ19にも選ばれたのだから。その分析によって中身だって、しっかりとコピーを……」  「はっ!ははは、面白ぇな。テメェ。急に、自分の能力を自慢げにアピールし始めやがってよぅ。そんなに、自分の得意技を見破られたのが納得いかねぇか?はぁ、哀れだな。テメェって奴はよ。……あぁ、確かに、テメェは他人の心を読むのは上手ぇんだろうさ。それで手玉に取られる奴も少なくねぇからな。だが…」 ・・・
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