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一旦言葉を句切ったジュピテルは、自分の胸のあたりを拳で叩きながら、ゆっくりと次の言葉を投げた。
「テメェは、心は読めても…心を理解することはできねぇ」
「……?……理解?」
「ま。女心……なんてぇもんは、この俺様にも分かりゃぁしねぇがな」
「おっしゃる意味がわかりませんね。私は、コピーした相手の心理までをも完璧に読んで、次の行動をほぼ完全にエミュレートすることができます」
「テメェは、情報技術系の用語の意味も理解出来てねぇんだな。はっ。テメェに出来るのは精々がシミュレート。真似ごとだよ。中身を理解できてねぇテメェに、エミュレートなんかできるわきゃねぇだろ」
「くっ。こ、言葉遊びで翻弄しようなどと……」
「はぁ……。全くもって中途半端な野郎だな。テメェは。まぁ。俺様はテメェの指導教官でもなんでもねぇからな。理解できなきゃ別にそれでいいぜ」
ジュピテルは、子どものような黒スーツの反応に、だんだん馬鹿らしくなってきてしまい、大きくため息をつく。そして、ゆっくりとソファーの位置まで歩み戻り、深く背中を預ける。冷めた目つきで……いや……醒めた目つきで黒スーツを睥睨する。
「で、いったいテメェは何しに来やがった?」
一方、黒スーツのPCも何故か先ほどまでの狼狽えが嘘だったかのような、ある種落ち着いた様子の無表情でその視線を受け止める。平然として。
・・・
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