第2章 a hostage

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   この男は一体何を言っているのか?  パラスは一瞬、何を言われているのか理解できなかったが、しかし、次の瞬間には黒スーツの言葉の意味を理解し、はっと息を呑み込む。  「くっ……。て、テメェ……な、何を……考えてぃゃがる……」  ジュピテルの顔に初めて浮かんだ動揺の色とは対照的に、黒スーツの男は喜悦にも似た表情で音を立てずに笑う。  「焦らないで下さい。先ほどの問いへの答えがまだでしょう。私がさっきまでずっと、何を考えていたのか。それを先にお答えしましょう」  「……訊かなくたって分かるぜ……くそっテメェ……こんな汚ぇ手の……タイミングを計ってやがったんだな」  「それは心外な物言いですね。違いますよ。このタイミングでこのお嬢さんが現れたのは、私にとっても計算外。ま、嬉しい誤算でしたがね」  「っく……じゃぁ何だ。さっさと言え」  怒鳴りながらも、ソファーから体を起こし立ち上がるジュピテル。  黒スーツを見下して、どうせ自分を害する術は何もないだろうと余裕でソファーに体を預けていたのだが、そのままではパラスを取り戻すこともできない。とりあえずは立ち上がり、どんな行動にでも自由に移れるような体勢を取る。  しかし、相手の答えを待つように見せて、ジリジリと距離を縮めようとするジュピテルだったが、下手に動けば「転移コマンド」で逃げられてしまうだろう。 ・・・
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