第2章 a hostage

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   パラスを連れたまま「転移コマンド」使われれば、いかなジュピテルと雖もすぐに追跡することはできない。転移魔法と「転移コマンド」ではその起動原理もプロセスも……そして、何よりも始動速度が全く違うのだ。飛び先の予測も付かない。  パラスがこの部屋へ向かっている気配は、実はジュピテルは事前に感じていたのだ。  しかし、この男と対面中にパラスが同じように部屋を出入りすることはこれまでも何度もあり、これまでは一度たりともパラスを気に掛ける様子などなかったから、ジュピテルは油断をしてしまった。  まさか、今日に限って、このような大胆な行動を取るとは。  ジュピテルは黒スーツのPCに気取られぬように、額の裏側に展開したコンソール画面に12人の親衛隊長たちの配置を呼び出す。自分が直接パラスを奪い返すことは難しいが、彼らを使えば……と考えたのだが……しかし、すぐにそれもまた同じことだと気が付く。  ジュピテル自身なら気配をある程度消して背後から接近することも可能かもしれないが、12人の親衛隊長たちには、この黒スーツのPCの裏をかく程の力はない。  できるだけ表情に出さぬように、ジュピテルの脳内を目まぐるしく様々な対策のアイデアが生みだされては、すぐさま却下される。  その内心の焦りを見透かすように、愉悦を湛えた表情でジュピテルを見下す黒スーツの男。そして、勿体ぶるようにゆっくりと口を開く。  「考えていたんですよ。ずっとね。アナタに勝つための方法を」  おそらく、最初の問い……とやらへの答えだろう。 ・・・
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