第2章 a hostage

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   そして、どうやら「勝つための方法」に思い至ったのに違いない。  難しいクイズの答えに自分だけがいち早く辿り着いた子どものように、その先を語りたくて仕方ない……といった様子で黒スーツは言葉を続ける。  「先ほどと同じことを言いますが、正面から戦っても私は絶対にアナタに勝つことはできない。それを認めた上で、私は考えたのです。では、私の土俵にアナタを載せることが出来ればどうだろう……と。いや。違うな。ある意味、これはアナタの採った戦略の模倣とも言える。……だから、卑怯だとは言わせませんよ?」  「……まさか……テメェ」  「ほぅ。さすが、ご本家。察しがお早いですね。そのとおりです。私は、人質を取らせていただくことにしました」  「…っ。パラス……」  ジュピテルがパラスを見る。パラスは黙ったまま、先ほど黒スーツに「救いに来た」と言われて以降、ずっと俯いておりその表情は見えない。  「純粋に力をぶつけ合う物理戦でも、精神力の強さを競う魔法戦でも、私の力はアナタに劣る。しかし、私にもアナタに勝るところが何もないということではないんですよ。私は、アナタのように親衛隊もいなければ、領民も抱えていない。そして、そう、GOTSSやGOTOSもいません。……私は、一人だ。しかし。それが私の強み」  そこで、言葉を切って、ジュピテルに挑むような視線をぶつける黒スーツ。それは、ジュピテルが自分の言葉を理解しているかどうか、観察するような視線でもあった。 ・・・
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