第2章 a hostage

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   「人質……ね。全く、アナタの産み出したシステムは、素晴らしい。戦うことなく、相手の行動を制することができるのですから。なんと効率の良い方法であることか。しかし、その方法は、私には全く効かない。何せ、守るべきものは自分の命以外に何もないのですからね」  そう言って、見せつけるようにわざとらしくパラスの肩を抱き寄せる黒スーツ。  パラスはされるがまま。  「どんな卑怯な手を使ってでも、逃げ延び、命さえ失わなければ、私は負けることがない。先ほど、正面からぶつかればアナタに100%勝ち目はないと私は認めました。が、しかし、正面以外での方法を駆使できるのであれば、逆に私は100%負けることはないのです。そう。負けないためには、必ずしも勝つ必要はないのですから」  「……だったら……」  「ん?何です」  「だったら、人質なんて不要だろう。いつものように、さっさと『転移コマンド』でもなんでも使って逃げれば良い。そうすれば、わざわざ俺がテメェを追うことはねぇ。そうだ。いつものように、さっさと失せれば良いじゃねぇか……」  「はぁ?……ご聡明なジュピテルさんとは思えませんねぇ。先ほどの私の答えを聴いていなかったんですか?私は『アナタに勝つための方法を考えていた』と教えて差し上げたはずですがね」  「……パラスを盾に、ここで俺と殺り合おうってぇのか?」  「ご冗談を。ここはアナタの土俵ですし、パラスさんを盾になんかしませんよ。ここで、万が一、パラスさんに傷でもつけたら、その瞬間に私は殺されてしまいます」 ・・・
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