第2章 a hostage

16/71
前へ
/314ページ
次へ
   ジュピテルのテリトリーで、ワザワザそんな危険を冒す必要はない。と、黒スーツの男は言っているのだ。  「アナタはどうも思っていたよりも記憶力が悪いようですから、もう一度言いますが、アナタと戦うなら、まず私の土俵に載ってもらう必要があります。アナタの領土内では誰もアナタに勝つことは出来ない。では、どうすればアナタを領土外へと引き摺り出すことができるか?」  答えは言わなくても分かりますよね?……とでも言わんばかりにパラスに視線を送り、再び、ジュピテルを挑発するかのようにその肩を強く抱く。  「アナタは、私に女装趣味があるのか?……的なことを仰いましたが、まだ気が付きませんか?私が、何故、パラスさんの姿でアナタの前に現れ、アナタに肩を掴まれてもなお逃げずに会話を続けた理由を」  「……どういうことだ?」  「確かめたんですよ。アナタにとって、パラスさんが人質となり得るかどうかを」  もう、ほとんど後ろから抱きしめるような形でパラスを拘束する黒スーツ。あと少しでハラスメント・コードに抵触し、最強クラスのガーディアンが押し寄せてくるのではないかと心配されるぐらい。  もちろん、黒スーツはそんなヘマはしない。ジュピテルをより精神的に動揺させ、この会話における優位を保つことが目的なのだから。  そう。ただ見せつけるだけだ。煽るように。 ・・・
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加