プロローグ

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   いつもはカミに振り回されている感のあるミコトだが、今は別人の如き主体性を発揮して必死にカミを逃がそうとしてくれている。  狭い路地だ。  言い合っている二人の顔は、どちらも進行方向を向いているしかない。  だから、ミコトがどんな表情をしているのか後を走るカミには見ることができない。  しかし、そのいつもとは異なる緊張した口調や、その緊張が形となって現れた強ばる肩口から、ミコトの形相が恐らくは必死なものであろうと容易に想像できた。  カミは、そんな親友の後頭部を見下ろしながら、どうして自分たちがこんな目に遭っているのか…と、何度目になるか分からない疑問を思い浮かべていた。  今日は、デスシムの内部歴で…確か11月10日。  あの恐ろしいハザード・イベント?…が、何とかクリアされてから1か月と少し。  カミたちTOP19(トップナインティナー)は、このデスシム世界を救った救世主…文字通り救いの「カミ」だったハズなのだが…。  クリア後の1週間ほどは、拍子抜けするほど平凡な日々が続いていた。  まぁ…、一般のPCたちにはハザード・イベントの原因や詳細、そしてどれだけの犠牲の上にクリアされたかは全く知らされなかったので、それも当然だった。  しかも、あのハザード・イベントの範囲から大きく離れた地域では、結局のところあの危機的状況は、全くもって危機的な影響を及ぼすことはなかったのだから。  クリアのためにそれほど大きな貢献をしたわけでもないことを自覚しているカミとミコトは、平凡な日々を不満に思うこともなく過ごしていたのだが…。 ・・・
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