14人が本棚に入れています
本棚に追加
こぽこぽこぽ
微かな音をたてて、ゆっくりと昇っていく泡。
そっと手を伸ばせばそれはほのかに温かく、するりと肌を滑り、また昇っていく。
少し前──もしかしたらもう何年かも前のことかもしれないけれど。
まぁヒトとは違う時を刻む私たちにとってそこは曖昧。
大切なのは、ある日突然この星に大きな大きな落とし物があったということ。
氷に包まれた寒い北の地に。
その日を境にして、この星は変わってしまった。
一面の氷を一瞬にして溶かしたそれは、今もこの星の奥深くへと沈んでる。
人々の話を盗み聞けば、この星の滅亡の日までもが決まったという。
海底から時折吐き出される泡は熱を帯び、星を覆う水は以前より温度をあげた。
その変化に耐えきれなかったコたちは数を減らして。
最近では以前とは違う姿をしたコもぽつりぽつりと現れ始めた。
それでも、やっぱり私たちはこの深い青から離れられない。
こぽこぽこぽ
深い蒼から現れる白い泡は今日も碧へと昇っていく。
静かに響く鈍い振動はまるでこの星の悲鳴のよう。
私たちに逃げる術なんて、ない。
最初のコメントを投稿しよう!