青、蒼、碧

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それならばと、私は見たこともない景色を見るために生まれた海を離れた。 朝日に輝く波を越え。 太陽が沈みゆく赤い水平線を目指し。 星々を映した宝石の水面(ミナモ)に揺られてひと休み。 泳いで、泳いで、泳いで。 沢山の人々の暮らしを覗いた。 でも行く先々で人間たちは醜い争いを繰り広げていて。 ──悲しく、なった。 昔憧れていたような、生気に満ち力強く生きる彼らはもういない。 これが終末を目前にしたヒトの本性なのかと暗い気持ちになった頃。 私はあの子に出会ったんだ。 「こんにちはっ」 荒々しい山肌に囲まれた小さな入り江で無垢な笑みを浮かべて岩場から顔を覗かせたのは、まだ年端もいかない小さな少年。 いつものようににこりと笑みだけを返す私を気にする様子もなく、彼はポケットからオレンジ色の丸いものを取り出した。 「今日はみかん持ってきたんだー半分コしよう」 彼の話す言葉は故郷の近くに住んでいた人間のそれとは違ってよくわからないけれど、二つに割られたそれを差し出されなんとか理解する。 『有り難う』 「みかんだよみかん、こうして食べるんだ」 伝わったのか伝わっていないのか。 皮を剥いてそれを食べる少年の笑みにつられて笑う。 手の中にあるそれは、故郷の海の側で開かれていた市に並んでいたものとよく似ていて。 初めて食べたそれはとっても甘かった。 『美味しい』
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