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彼に出会ったのは私がこの岩場に腰掛けひと休みしていた時。
すぐに逃げようとした私を追いかけ海へと落ちた彼を仕方なく助ける羽目になったのだけれど。
怯えることもなく屈託のない笑顔で何かを語りかけてくる様子に何となくほだされて、もう十日ほど経った。
気付けは私自身、この子に会うのが楽しみになっている。
何の計算もない、無垢な笑顔。
ころころと変わる表情で何かを話したり教えてくれたりするのが必死で、可愛らしい。
時折見せる悲しげな目が世界の終わりを憂いたものなのか、はたまた彼自身の何かを憂いたものなのかはわからなかったけれど。
よく笑う小さな新しい友達に、私の沈みかけた気持ちは確かに救われていたんだ。
「あ、もうこんな時間だっ、また明日来るね!」
ポケットのケータイを見て慌てて少年が立ち上がる。
陽が傾き影が長く延び始めると、いつも彼はどこかに帰っていく。
バイバイと手を振り岩場を跳ねるように駆けていくその姿をどこか羨ましい気持ちで眺めていると。
「うわ!?」
短い叫びと共に彼の姿が視界から忽然と消えた。
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