青、蒼、碧

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焼けつくような熱、 息が出来ないほどの苦しさ、 身が引き裂かれるような痛み。 気が遠退きそうになるのを何とか必死に繋ぎ止める。 だって、私にはしなくちゃいけないことがあるから。 私にしか出来ないことが── 慣れない身体で彼のもとにたどり着くと、落ちくぼんだ岩場の影に横たわる小さな姿があった。 薬に焼かれた喉はもう声すら出ない。 よろつきながらも近付いた彼は落ちた時に打ったのだろう、頭からじわりと血が溢れている。 このままではいけない。 でもこの子の家もこの町も、私は何も知らなくて。 焦る気持ちを何とか押し込め優しく、優しく彼を抱いてやってきた入り江の入り口。 そこには左右に長い道が続いていた。 ……あ。 少し離れたところに運良く見えた一つの人影に私がとったのは、 その場を離れる ということ。 長く人を見ていたからこそわかる。話せない、纏うものもない、そんな今の私がいれば間違いなく怪しまれてしまう。 この子にこれ以上迷惑はかけられない。 それに、もう……──
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