1.箱競争(ボックス・レース)

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 晴々とした空の下、二人の若い男女は派手なデザインが施された服を着てマイクを握っていた。 「さぁ!」 「今年も開催されます!」  二人は大げさに腕を大きく動かしながら声を揃えて喋っていた。それぐらいが、丁度いいからだ。 「伝統ある今大会も、今年で節目ともいえる・・・」 「第二十五回目を迎えることになりました!」  二人は空を飛んでいた。鳥かごのような箱に入って。  その姿は、地上だけでなく立方体、円柱といった変わった建物にいる観衆の目に触れることになる。  町は活気で溢れていた。町に住む人達が仕事も忘れ、これから開催される大会に魅入っていた。  人々の活気に後押しされるように二人の若い男女は声を揃えていう。 「では、今年も行きましょーか!」 「ええ!第二十五回!ボックスランド名物!『箱競争(ボックス・レース)』!」 「「開催でーす!」」  二人の司会者が高らかに開催宣言がなされると、活気は熱気へと変わった。変わった建物や広場に設置された何十本もの筒から花火が一斉に打ち上げられ、青い空に真四角の図形の雲が描かれた。  箱のような建物をかいくぐるように、この日の為に用意された競技場(コース)には、空飛ぶ箱に入ったカメラマン達がレースの様子を捉えようと待ちかまえていた。  今大会の開催宣言はなされたが、まだ始まらない。前座があるからだ。 「さぁ!今回、節目のでもある『箱競争』!」 「スタート地点から郊外のゴール地点に誰よりも早く到着するのは、もちろんの事!」 「今回から、二十六年前に好評だった伝説の競技『箱闘技(ボックス・バトル)』も復活しました!」 「そして、今回、一般の出場者に混じって、ついにこの方々が参戦することになりました!」  司会者の女性が言うと、レースのスタート地点に四つの箱が箱形の輸送ヘリから投下された。明らかに他の箱とは違う四つの箱は電磁石で誘導される形で予め空けられてスタートラインに無事、着地する。 「ボックスランドが誇る、最強の自警団〈箱の守護者達(ボックス・ガーディアン)〉の登場です!」  突然、音楽が聞こえてきた。それは、彼らの登場を彩るのには欠かせない演出だった。箱の形をした楽器で奏でるオーケストラの演奏をバックに、ロックが解除さると箱が展開し、中から四人の男女が姿を現した。
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