56人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
-入社2年目の2月14日ー
「・・・その、分かってるんです。
センパイが女の人だってことは・・・・
でも、どうしても気持ちが止められなくて・・・・。」
小動物みたいに可愛らしい女の子が目を潤ませて、
・・・・・私を見上げている。
今日はノー残業デーそしてバレンタインDAY。
世の中のうら若き者達が足早に会社を出て、女が男に愛を告白する日だ。
・・・・そしてそんな日に私は今、
後輩の女の子に愛を告白されている、状況。
さっき会社のロビーで呼び止められて、
ここじゃ話せないんで、移動していいですか?
と言われて何となく嫌な予感は、してた。
でも、その子は新人研修で総務課に来た時、
みんなで可愛がっていたし、なかなかの頑張り屋さんだったから、
新しい部署での相談なのかもしれない。
きっとそうだ。そうにきまってる。
・・・・・そんなはず、ないんだから・・・・
けれど、その願いは見事に破れ、
会社の裏手にある小さい神社の、これまた小さい赤い鳥居をくぐった途端、
小動物ちゃんは堰を切ったように泣き出した。
手には手作りであろうバレンタインチョコが入ったピンクの紙袋を抱えて。
「・・・・だからね。総務課の王子様に
こんなこと言うのはどうかと思うんですけど。」
・・・・総務課の王子様って・・・・・
・・・・そりゃ入社したての頃散々言われたけどさあ。
はあ~。
大きい溜息が出た。
今まで、女の子からの告白は何回か受けたことがあるが、
こんなに真剣なモノは正直初めてだった。みんな大体
一緒に写真撮ってください。とか、
頭ポンポンしてください。とか、
ドラマや漫画に出てくる男の子のセリフ言ってください。とか。
まあ。セリフに関しては赤面しすぎてあんまり言えなかったけど、
そんなんばっかりだったから・・・・
(・・・・困ったなあ。早く何か言わないと。)
私が空を見上げると、まだ六時過ぎた頃なのに、
いつの間にか白い月が出でいる。
春はまだ遠いなあ~~~。
なんて、ぼんやりと思っていたら、
小動物ちゃんがぐいっと私の胸元に紙袋を押し付けてきた。
目が・・・・本気、だ。
「センパイのこと、好きなんです!!だから・・・・」
最初のコメントを投稿しよう!