1人が本棚に入れています
本棚に追加
猫は、森に迷ってしまった。
おそらく他の猫集団と離れ離れになってしまったのだろう。
その猫は不安と焦りで胸がいっぱいだった。
猫は、まだ大人ではなかった。なのでとても怖かった。
「狼なんかが出ないといいのだけれど…」
心の中で呟いたつもりが、いつの間にか声として出ていた。
―ガサッッ・・・―
「ん…?」
(いま、物音がしたような)
猫はその音を気のせいだと思った。だがしかし、その音が猫を追いかける。
―ガサガサッ。ザワザワ…―
猫は音のした方に目を向けてみると…。
「うわあ!!」
なんと草が動いている。猫は歩調を速めた。でも、それでもその音は追ってくる。
―ガサッッガサガサガサ…-
もうその時には猫は震えていた。
もう、生きていけないような不安と焦りとそして緊張感の物凄く出た表情をしていた。
―ビュンッッ!―
いきなり目の前に影ができた。猫はおもわず目をつぶった。
…恐る恐る目を開けると、目の前に行儀よく立っている、狐だった。
「え…」
良かった、狐でよかった。
何故か猫の身体から力が抜けた。ほっとした。
「お前…」
その途端に狐は声を発した。
「お前…。猫、だな…?」
「は、はい」
狐はそむけていた顔をいきなり猫に見せた。
「!?」
狐は、物凄い形相でこちらを睨みつけていた。
最初のコメントを投稿しよう!