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「あ…の…」
猫は戸惑った。
まさか狐がこんな形相で睨みつけるとは思っていなかったからだ。
「ここは俺達アラー王国の縄張りだ」
狐は猫を見ながら言った。
「分かりました…」
猫はとぼとぼ自分の来た道を引き返した。辺りには草が生い茂っている。
猫が歩くと、ズサ…ガサ…と音がするくらいだ。
「あーあ…」
何だか猫は心細くなって、途方に暮れてしまった。
これから、どうすればいいのだろう?
仲間とは離れてしまったし、猫は幼いころ母親を亡くしてしまっていたので帰るところがない。
ズサ…ゴリッッ…
途端、地面が下にずれた。丁度猫が歩いているところに。
「えっ!?」
気付いた時にはもう遅かった。
空が傾いた。猫は目を閉じた。
…その後しばらく、猫は意識を失ってしまった。
*
狐は、後ろの方からその音を聞いた。
ゴリッ…
ここは比較的静かなので音が響く。
「あっちは確か…あの猫が行ったのでは?」
狐は走った、走った。
狐は小高くなっている小さな崖の下を見た。…あの、猫がいた。しかも、気を失った状態で。
「ああ…」
俺のせいだ、俺があんなこと言ったからだ、と狐は思った。
狐は猫を自分の住みかへ運んで行った。
白樺の木が風に揺れてカサカサ…とうなった。
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