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 薄暗い自室で、三城卓はパソコンに向かっていた。ただ掲示板を巡回し、動画サイトのランキングを確認し、ネトゲにログインし、通販サイトでゲームを購入し、飽きたら布団に包まって寝る。それだけの生活を送っていた。  食事は毎日幼馴染が作ってくれる。昼も彼女手製の弁当がある。夜はより豪華なおかずがついてくる。お金も勝手に入ってくる。何不自由ない生活、彼は決して自分の領域から外に出ようとしなかった。  時間感覚など、とっくになくなった。声の出し方すらおぼろげだ。それでもいい、それでいい。  社会に不必要な人間は、社会に出る必要がないということなのだから。 「卓、夕飯ができた。開けてくれないか」  扉の外から幼馴染の声。しかし返事はしない。 「今日はハンバーグを作ってみた。今回のは、いつにも増して会心の出来だと思う」  聞き慣れた台詞だった。返事はしない。 「卓さえよければ、一緒に食べないか? 食事は二人で食べた方が絶対に美味しいだろう」  興味ない。返事はしなかった。 「私は下で食事を摂る。卓の分はここに置いておく。何かあったらすぐに私を呼べよ?」  気配が、足音が遠ざかっていく。返事はするつもりもなかった。
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