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「そう、何でもいいけど、仕事に支障が出ないようにね」
『はっ…はいっ!』
『ハハ(笑)分かってますよ』
それじゃ。と言って私は再びオフィスに向かって歩き出した。
『…あのっ…昨日は本当にすみませんでしたっ……』
『ああ、いいよいいよ(笑)でもこれからは―…』
また2人の話し声が遠ざかっていき、小さくなってヒールの音に飲み込まれていった。
(藍沢さん、プライベートでも相変わらず謝ってるのね。)
「クスっ…」
何だか可笑しくて、つい1人で笑ってしまった。
(……っ!!)
その瞬間ハッとして、
すぐさま周りを確認する。
(誰もいない……わね)
良かった。
1人で笑ってる所なんて見られるくらいなら、
海に沈んだ方がよっぽどマシだからね。
…特に谷崎。
目撃したら恐らくまた『羽石ちゃんが1人で笑ってるー』とかはやし立てるに決まってるわ。
とことん嫌な奴。
今度からもっと気を引き締めないといけないわね。
ゴソゴソとバッグから鍵を取り出し、扉を開けた。
《ガチャ》
扉の向こう側。
そこには、ずっと見てきた、見慣れたオフィスがある。
ここでまた、新しい1日が始まるのだ。
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