6/14
前へ
/32ページ
次へ
「そう、何でもいいけど、仕事に支障が出ないようにね」 『はっ…はいっ!』 『ハハ(笑)分かってますよ』 それじゃ。と言って私は再びオフィスに向かって歩き出した。 『…あのっ…昨日は本当にすみませんでしたっ……』 『ああ、いいよいいよ(笑)でもこれからは―…』 また2人の話し声が遠ざかっていき、小さくなってヒールの音に飲み込まれていった。 (藍沢さん、プライベートでも相変わらず謝ってるのね。) 「クスっ…」 何だか可笑しくて、つい1人で笑ってしまった。 (……っ!!) その瞬間ハッとして、 すぐさま周りを確認する。 (誰もいない……わね) 良かった。 1人で笑ってる所なんて見られるくらいなら、 海に沈んだ方がよっぽどマシだからね。 …特に谷崎。 目撃したら恐らくまた『羽石ちゃんが1人で笑ってるー』とかはやし立てるに決まってるわ。 とことん嫌な奴。 今度からもっと気を引き締めないといけないわね。 ゴソゴソとバッグから鍵を取り出し、扉を開けた。 《ガチャ》 扉の向こう側。 そこには、ずっと見てきた、見慣れたオフィスがある。 ここでまた、新しい1日が始まるのだ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加