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『…あー……羽石』 「はい」 谷崎が私の事を『羽石』と呼ぶ時は、 だいたいいつも真面目な話をする時。 と、同時に、こいつが珍しく真面目である証拠。 7年も同じ職場で働いてると、嫌でもこうゆうのがすぐに分かってしまって、 無意識に身構える癖がついてしまった。 数回目を泳がせて、スッ、と酸素を吸った谷崎の口から出てきた言葉は…… 『この前…風間と話してなかった?』 「…いつですか。」 『え?この前だよ』 「………い・つ、ですか?」 『ちょっ…怒るなって!…えっと…確か…羽石が珍しくミスした日だったかな……あっ!睨まないでね!汗』 なんでわざわざそれを言うかな…バカなの?サルなの? 「…話しましたけど、それがどうかしましたか。」 『やっぱり!』 「………それが、どうかしましたか?」 『あっいや!!べつに!!何でもないから!!』 「…」 え、何、それだけ? (…少なからずもコイツ相手に緊張した私が馬鹿だったみたいね) 『あー!いや本当にこの料理美味いなー!』なんて目の前で猿芝居を始めたサル…じゃなかった。谷崎。 料理って言うかそれ飾りだから。ルッコラだから。 (まさかコイツ…) 「もしかして今、私がミスした事を遠回しに『いやいやいや待て!!!違う!そんなんじゃないから!!!違うから!!!』 馬鹿みたいに大きな声を張り上げながら、立ち上がった谷崎。 無論、周りの視線を集めることになった。 (あー、五月蝿い。鼓膜が破れたらどう責任とってくれるのよ) 「…部長、静かにして頂けますか。」 『……スミマセン』 シュン、と、しおらしくなったサルは黙ってディナーを食べ始めた。 (…) (…ミス、か。) あの日のミス。 私の初めて犯したミスは、 まだ心の中に重くのしかかっている。 思い出すとまた落ち込みそう。 (引きずるのは良くないって…私が一番分かってるのに。) それでも私のプライドは すぐに忘れてはくれないみたい。 そうゆう所が、たまに自分でも嫌になる。
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