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朝の目覚めは、やはり爽やかなのがいい。
一日の始まりだし、まして休日ならなおさら。
だが、神様は俺に残酷だった。
「……ぐっ…」
俺を起こしたのは鳥のさえずりではなく、
体にかかる重圧、息ができない苦しさなどで……どーしてこうなった……。
「……っ…何やって…る…、…あん…た」
「……」
相手は言わずもがな、昨日拾ったヤツで。
俺に跨がるようにして探るように前髪の切れ間から見下ろしている。その目は何を考えているのか読めない。返事はする気がない…?
その代わりに首にかかった手に力が加わる。
慌ててその手を剥がそうとするが……
ヤバいな、このままだと俺死ぬかもしれない…
相手はかなり強い力で俺を押さえていて。
かつ、押さえるべき部位もしっかりと理解しているようだ。
押さえ方に隙はなく、完全に動けない状態…。
………。
…ちょ、ヤバいな、それ!?
寝起きで寝ぼけていた頭がようやく冴えてきた。
自分が死の間際に立っていると自覚。
今更ながら焦る。
「……おい…っ…」
「…お前は、誰だ」
!
「…っ、いや、それは…こっち…の台詞…!」
「……藤堂のモンか?それとも橘?」
「…い…言ってる意味…わかんない…けど」
誰だよ藤堂って…
………。
「……違ったか…」
すっ、と首にかかる力が消えた。
「!…はぁっ…ごほっ」
空気が一気に入り込んだせいで、むせてしまう。
うずくまって呼吸を落ち着かせる。
その隙にちらっと相手を窺ってみた。
座り込んで何か考え込んでいるようだ。
敵意は感じないから多分危険はなさそうだけど……コイツも状況が理解できずに焦ってる…とか…?
……呼吸が安定してきた…。
ホッと息を吐き、その黒い髪に向き合う。
もし、相手も混乱しているんだというなら、
「…………」
「……あのさ、あんたが何考えてるのか分かんねぇけど、俺はあんたが何者かなんて知らないからな」
とりあえず昨日拾った経緯を話してやろう。
………。
「……というわけだから。目が覚めたんなら帰ってもらえるか?」
長期泊めるつもりなんて毛頭ない。
はぁ…これで納得してさっさと帰ってくれ。
「………」
相手は反応を示さず、ただこちらを見ている。
「…おい、聞いてたか?」
「………、」
だがそのうち、
その瞳にもようやく納得の光がさしてきた。
そして、次の瞬間。
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