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「そうか……」
「まぁ惰性で捨てずにいるだけで、じいさんが亡くなってからは……誰も読んでないんだけどね……お、あったあった」
ふたを開け、中身を確認。
…よし、まだ使えるのが残っている。
「これでいいか?」
後ろ手に彼に差し出す。
「…うん、ありがとう…」
でも、どこか上の空な返事。
振り返ると優顔はこちらを向いていなかった。
何かの本から目を離すことなく真剣に読んでいる。
近寄ってその本を覗きこむと、
……フランス語。
「…読めるの?これ」
「!あー、うん…一応?」
気づかぬうちに真横にいた俺に驚いて、それから照れくさそうにへらっと笑う。
へぇ、読めるのか…… 。
イケメンかつ仏語マスターとは…ますますこの人物が分からなくなってきたな…
居間に戻る。
すると救急箱を抱えた優顔に
「ごめん、これ使ってちょっとしたいことあるから…少しだけ部屋の外に出てもらっててもいいかな?」
見られたくないんだ、ごめんね、と言われるままに流されて追い出されて……どういうことだこれは。
気がつけば俺は見ず知らずのやつの言葉に素直に従って廊下に座り込んでいた。
完全に主導権を持つのは彼。
…あれ、一応俺この家の主だよな?
………。
入るなと言われてしまったので何もすることがない……。
…うーん…茶でもいれるか……。
のっそりと立ち上がり台所へと向かう。
コポコポと茶を2つの湯飲みに注ぎながら、ぼーっとして。
ふと時計を見ると、
「あ」
もうお昼時になることに気がついた。
何か食べるものあるかなー、と冷蔵庫の扉を開けて中を見る。
その時
ガタタッ!
居間から大きな音。
もう…今度は何!
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