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襖を思いっきり開けると、
「あっちゃー…ごめんごめん」
優顔はへらりと笑って頭をかき、
「俺不器用なんだよね…ははは」
「不器用…の次元を越えてると思うけどな」
箪笥も倒れ、ちゃぶ台はひっくり返り、救急箱の中身はぶちまかれ……一体どうしたらこうなるのか…
呆れと同時に、イライライライラ…
「はぁ…いいよ、もう。大人しくしててよ、俺が片付ける」
「いや、でも手伝…」
「いい、また散らかされたら面倒」
「だけど…」
「だからっ!えェからじっとしとき!」
「…はい……(なんで関西弁……)」
しゅんと大人しくなるそいつを放って俺は片付けに専念する。
よく考えたらおかしいんだ、俺はこいつに優しくする義理なんてないしそもそも救急箱貸す必要もなかったしそれになんで俺はこいつの言うこと素直に聞いちゃってんのか…!
自分の流され具合にイラつき、片付けがすむ頃には怒り具合MAXで
文句のひとつも言ってやろうじゃねぇか!
「っ、そもそもさぁ…!!!!」
と、バッと後ろを振り返って、
「……っ!」
「…あっ、しまった……」
その姿に呆然とした。
奴は救急箱の包帯を掴んでそっと腹部に巻いている最中だったのだが…
その腹は真っ赤だった。
腹部からの出血、それも既にほとんど止まっているが…なかなかの量。
まだ一部はテラテラと鈍く光を反射している。
よく見ると脱いだ彼の服にも染みている…黒い服だったからあまり目立ってないけど…。
…あぁ、昨晩は気付かなかった……。
少しの静寂ののち、
その傷を俺の目から隠すように手で覆い、
「……ごめん、君に見せるつもりはなかったんだけど……」
と、奴は苦笑した。
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