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のどかな昼下がり。
社内の雰囲気もお昼休みの直後なのでどこかゆったりとしている。
そんな中、
ダンッ!!!!!!
机の叩かれる大きな音。
皆がビクッと肩をすくめる。
叩いたのは、課長。
「…何だと!?」
「す、すみません!」
慌てて頭を下げる。
ああ、失敗した……
「なんでしっかりバックアップ取ってなかったんだ、弛んでるぞお前!」
入社一年が過ぎ、ワンツーマンで先輩社員に指導してもらう期間も終わって、まだ一週間。
俺は小さな失敗をした。
でもその小さな失敗は連携の仕事では大きな失敗へと繋がってしまう。
…俺が誤って作業中のデータの一部を消してしまうという失敗も。
「はいっ、すみません!本当に!」
「謝って済むのか!?」
「ごめんなさい!何とかします!」
「何とかって何だ!」
何とかです!とは言えない…
どうしよう、まさかこんなことになるなんて…
ノープランだ、バカ俺!
「ご、ごめんなさい…!」
どうしようどうしよう、えっととにかくこの間まで作ってたデータとまだ残ってるデータを合わせて…あ、でも資料どこやったっけ…えっとえっとえっと……
ああもう、頭ん中ぐちゃぐちゃだ!
と、そこで、
「何とかで、済みますよ課長」
「…何?」
「…!?中嶋さん……」
それは、俺を指導してくれた先輩社員の一言だった。
微笑みながらこっちまで歩いてきて、素敵に立ち止まる。
「大丈夫です、これがあればね」
と、その手中のメモリーカードを掲げた。その際カードがキラリと光ったような気がしたのは…錯覚か。
あなたは一体どこぞのヒーローですか…?
…その20分後。
「本当にありがとうございました…」
「いいって、気にすんな」
屋上で俺は先輩に平謝りをしていた。
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