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確かにあんまり話したことないな。
なんか近寄りがたいオーラあるし…いや、それ以前に課も違うしな…。
そんな俺の顔を見て、
「あー…いや、まあ知らないなら別にいいんだ。悪かったな急に」
「…いいえ、こちらこそすみません」
俺の同期が心配してるんだよ、解決してやれたらと思ったんだけど…やっぱりいい迷惑かな、と困ったように笑う先輩は、やっぱり優しい人なんだなと思う。
この人の下で指導してもらえて、俺は幸せだなぁ、とも。
「先輩…」
「良いんだ、忘れてくれ。…あっ、すいません、追加でミモザサラダとあんかけソースのカルパッチョ、あと特製たこ焼き(中身不明)、鯵のなめろうとつくねとねぎま三皿と、あーそれからこの特製なまこの姿焼きもー…えっ、何だこれ、うまそっ!あの、これって何ですかね?」
…あとはこの大食いスキルを自重してくれたら…いいのにな……。
俺は泣きそうになりながら、先輩を沈めるために店一番度数の高い酒をオーダーした。
居酒屋の店員がシャッターを下ろす。
それを背にして、
「じゃ、お気を付けて」
「んー…明日は失敗すんなよ…」
「はい!」
俺は酔いつぶれた先輩を乗せたタクシーを見送った。
ごめん、先輩。明日は休日です。
でも今日はありがとうございました!
と気持ちをこめてお辞儀をして、顔を上げた時には既に車は角を曲がって見えなくなっていた。
「…はー……」
一日の疲れがどっと押し寄せてくる。
ネクタイをゆるめて一息。
財布の中身は、死んでしまった。
ほぼ一文無し。恐るべし先輩の胃袋。
泣ける……でも、もともとは俺が撒いた種なんだよな……はぁ…ダメだ、どんどん暗くなる…。
パンッ
頬を思いっきり叩く。
もう切り替えねば!
「…よし、歩いて帰るか!」
家まではなんとか歩いて帰れる距離。
気を紛らすためにも、俺は街路に一歩踏み出した。
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