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「ほら、いつまでも拗ねてないで働いた、働いた。こんな散らかってたら、大事なお客様に失礼と思わないか?」
「お客様も何も、普段は誰も来ないじゃないでーー」
最後まで口にしかけたところで、僕はふと小泉さんの店で働き始めてから今までの事を思い出す。
普段は、お客さんの影も形もないと言っていいくらい暇なのだけれど
「普段が何だというんだい?」
小泉さんの口角が鋭い三日月を描く時、決まって厄介事が起きる。
それも僕にとって最高に最低な厄介事だ。
「ふふっ……さてさて」
すきま風がソッと僕の背中をなぞる。
それと合わせる様に玄関口がギギギと不快な音を奏でながら左右に開いた。
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