第1話

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 半年前、こんな噂を耳にした。 この町の何処かに一風変わった店があると。  なんでも人の行き交う繁華街の路地裏にひっそりと存在しているであろうその店は、とあるもの――いや、とある話を中心に商いを行っているらしい。  ある者は、誰もが一度耳にしたことのある話を。 またある者は、不思議と学校や街中でに広がる噂を。 中には自分で作った話を持ち込んだ、なんて話も聞いたこともあるけれど、これらの話に共通している事は、その店はどうにも “怪談話” の買い取りをしてくれる、との事だった。 この話を耳にして僕がまず思ってしまったことは、リーマンショックを過ぎたとは言え、こんな不景気の中これまたずいぶんと酔狂な商売をしている人もいるもんだ。 そんな十人並の極々当り前な感想を抱いてしまうのは、ある意味でしょうがない話と我ながら思う。 だからこそなのか。僕は半年前、あっさりとこの噂話の事を忘れてしまった。    煙のない所に火はたたない。しかし尾ひれがついて広まるのも噂話なのならば、特に気を留める必要はない。  まぁ、夢のある話と思わないでもないが、現実離れした話に踊らさない程度にはリアリストであると自負していた僕であったけれど……  
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