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相変わらず、やりたいことは特に見つからなくて、貯金は増える一方だった。
金はあるに越したことではない。
ただ、有意義な使い方が思いつかない間は、ただの紙切れのようにも見える。
そこで、いっそのこと、大金を無駄遣いしてみようと思った。
銀行から十万円を下ろして、十人の同じ顔と睨み合いをしながら、こいつらをどう無駄に使ってやろうかと二日ほど考えた。
どんな使い方でも良かったのだが、とりあえず、ゲームセンターのUFOキャッチャーの景品を片っ端から全部取っていくことにした。
高校生だった頃、中年の男性が、景品の詰まった袋をサンタのように担いでいるのを見て、少し憧れたものだ。
無人のゲームセンターでやってもつまらないと思い、週末に決行することにした。
日曜日の午後四時、ゲームセンターに人が多くいるだろうと見込み、十万円だけポケットに突っ込み、手ぶらで家を出た。
ゲームセンターは、プリクラを撮りに来た女子高生や、子供もいて、想像以上に賑わっていた。
いざ始めようと思うと、普通にUFOキャッチャーをするだけだというのに、一人でそれを行う度胸が無くて、高校の同級生の疋田に電話をかけた。
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