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「今何してる?」
「暇してる!」
返答のテンションの高さから想像するに、電話がかかってきた時点で、疋田は遊びの誘いだと察したらしい。
「いつもの、っていうか、昔けっこう行ってたゲーセンいるんだけど、来る?
奢りだよ」
「マジか!
行く行く、すぐに家出るわ」
金は借りても返さず、夜遊びばかりしている疋田の唯一の取り得は、呼べば必ず来るということだ。
それも、疋田がすぐと言えばすぐだ。
五分もしないうちに、自転車で疋田はやってきた。
偶然会うときに毎回履いているのか、それしか着る物が無いのかは知らないが、左の膝の所に穴の開いたスウェット姿は、もうトレードマークのように見慣れてしまった。
「UFOキャッチャーの景品、全部取ってみよっか」
「はあ?」
ポケットから十万円を引っ張り出して、疋田に見せびらかした。
「全部は無理っしょ?」
「ああ、全種類一個ずつって意味だけど」
「お前最高だな。やろうやろう」
疋田は、自ら先陣を切ってゲームセンターに踏み込んでいった。
楽しそうだと思えば、何故だとか聞き返さない分、疋田と一緒にいるのは余分な体力を使わないで楽だ。
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