日記 2

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ある日、少し変わった人がその古本屋に来た。 昼間の暇な時間帯で、参考までにと私が十八禁の本を二階のレジの奥のスペースで流し読みしていた時だ。 「すみません」 普段、この古本屋では聞くことのできないような透き通った声で、呼びかけられた。 「はい、なんですか?」 受け答えて、その声の主の方を見た。 声に合った可愛らしい風貌で、年齢の判断が難しい。 中学三年生と言われても、社会人一年目と言われてもなんとなく納得できてしまう。 「えーと、おすすめの本を教えていただきたいんですけど…」 「おすすめの本でしたら、階段で二階に上がって来たところの正面にありますけど」 「いえ、この店じゃなくて、あなたがおすすめする本を読みたいんです」 この時点で、私が言うのも何だが、この人は変わっているなと感じた。 冗談交じりで、今さっき手にしていた十八禁の本を勧めようかと思ったが、踏みとどまることに成功。 どうせ暇な時間帯だったからと、真剣に考えてみることにした。 レジの裏側から出て、その人に勧める本を探すことにした。 その人も、小さな歩幅で、後ろをついてくる。
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