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ある日、少し変わった人がその古本屋に来た。
昼間の暇な時間帯で、参考までにと私が十八禁の本を二階のレジの奥のスペースで流し読みしていた時だ。
「すみません」
普段、この古本屋では聞くことのできないような透き通った声で、呼びかけられた。
「はい、なんですか?」
受け答えて、その声の主の方を見た。
声に合った可愛らしい風貌で、年齢の判断が難しい。
中学三年生と言われても、社会人一年目と言われてもなんとなく納得できてしまう。
「えーと、おすすめの本を教えていただきたいんですけど…」
「おすすめの本でしたら、階段で二階に上がって来たところの正面にありますけど」
「いえ、この店じゃなくて、あなたがおすすめする本を読みたいんです」
この時点で、私が言うのも何だが、この人は変わっているなと感じた。
冗談交じりで、今さっき手にしていた十八禁の本を勧めようかと思ったが、踏みとどまることに成功。
どうせ暇な時間帯だったからと、真剣に考えてみることにした。
レジの裏側から出て、その人に勧める本を探すことにした。
その人も、小さな歩幅で、後ろをついてくる。
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