7人が本棚に入れています
本棚に追加
三日後に、その変わった客はまた現れた。
とびっきりの笑顔でレジまでやってきて、こう言った。
「勧めていただいた本、たいへん面白かったです。私からあなたへお勧めします」
この前私が勧めた、寿限無のようにタイトルの長い本を、その人は差し出してきた。どうやら今回は、古本屋の店員としてではなく、読者として手渡されたみたいだ。
「ありがとうございます。今度読んでみます」
読むかどうかはわからないが、一応社交辞令とお礼を言って、その本を受け取った。
「それで、またおすすめの本を教えていただきたいんですが…」
「おすすめと言われても、前回みたいに、タイトルとか表紙とかで選ぶことしか私にはできませんが」
「それで大丈夫です」
こんな寂れた古本屋には似合わない、相変わらずの笑顔で言われてしまうと、断ることもできない。
結局、また背表紙から溢れんばかりのタイトルの長さの本を探し、それを勧めた。
この人は、どうやら昨日も店に来たらしいのだが、私がいなかったために何も買わずに帰ってしまったと言う。
私がおすすめする本を買いたいのだとか。
最初のコメントを投稿しよう!