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俺は、日記を読み終わると、それをパタリと閉じた。
やはり日記というよりは、西澤が自分を視点にして書いた小説だ。
この日記を、俺は古本屋で立ち読みしていたわけだが、目の前の『わ』の棚にある紫色の心理学の本のすぐ横に、ただの惨いだけの小説が置いてあって、何だか物寂しい。
初めて彼女に本を勧めてもらおうと思ったときは、本当に気まぐれでしかなかった。
強いて言えば、レジの奥で姿勢よくエロ本を広げている彼女に興味を持ち、恋心とは違った一目惚れをしてしまったのかもしれない。
変わった人には関わらずにはいられない。
それから、この二冊の本の間に挟まれた本は、いつだって興味深い本ばかりだった。
俺と西澤しか知らない、このおすすめの本の在り処には、もう新たなおすすめの本が置かれることは無いのだ。
この、日記が最後の一冊だ。
彼女は、俺に理解されないようにと、自殺をしたにも拘らず、俺に一番見つけやすい場所にこの本を残していった。
何故だろうか。
理解ができない。
なるほど、自殺したことではなく、ここに本を残していったことが、彼女の切り札だったのかもしれない。
確かに、その気持ちは理解できそうにない。
警察は、彼女を殺した犯人を追っているだろう。
当然、犯人はもう死んでいるのだが。
彼女が自殺して、特に悲しいとかいう気持ちは無い。
彼女に対してそういった感情は持ち合わせていなかった。
知り合いが死んで悲しくないという気持ちは、あまり理解されないだろう。
それでいい。
俺も西澤同様、あまり理解されない人間だ。
だが、理解はしたい人間なのだ。
誰にも理解されようとしない西澤を、理解してしまいたかった。
それが結果、彼女を死に追い込むことになってしまったのかもしれないが、罪悪感は、悲しみ同様特に無い。
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