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西澤が書いた日記を持って、家に帰ることにした。 あの店のどの本よりも金を多く払ってもよかったが、生憎値札がないため、こっそり持ち出した。 帰り道の途中、会社員とぶつかった。 「失礼しました。ごめんなさい」 俺は、ぺこぺこと頭を下げて謝った。 誰かと話すとき、自分でも嫌になるくらい、丁寧な口調になってしまう。 両親にでさえ敬語だし、一人称なんていつだって『私』だ。 歩道橋の上で、彼女の文章の内一ページを破り取り、歩道橋の手すりを机にして紙飛行機を折った。 それを投げてみると、上手い具合に風に乗り、ぐんぐんと遠くへ行ってしまった。 なんとなく落ちていく姿が見たくなくて、上手く飛んだことを確認したら、最後まで見届けずに帰った。 西澤の書いた文章で作った紙飛行機は、一万円の紙飛行機よりも、ずっと遠くへ飛べたのだろう。
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