密通

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ドアは5つ。 ひとつだけ鍵がかかっている。 もしかして、誰か倒れた? オロオロとしながら、どうしたらいいのか躊躇している私の耳に 「……こ…声…出ちゃう。」 息の上がった女の人の声。 一瞬、頭の中をイヤな予感が横切った。 眉をゆがめながら、もう一度、耳を澄ませて声を聴いてみる。 「聞こえちゃうよ?」 上がった呼吸で問いかける男の声。 「でも、皇…激しい……もう……。」 その女の人の声を聴いた瞬間、頭の中の予感が、確信に変わった。 でも、皇って… 聞いたことのない名前に、戸惑ったのは瞬刻。 「こういうスリル、好きだろう?」 この声!! 「九重部長!?何をやっているんですか!!!」 無意識に大きな声で怒鳴っていた。 だって、会社のトイレって。 そういう場所じゃないでしょ!? 「沙菜ちゃん?順番ね。」 急にテンション上がった声で返事をした。 声で分かるのもビックリだけど。 「順番じゃないです!!そういうことをする場所じゃないでしょ!!」 ホント、何考えてるの!? こんな獣と… これからしなきゃいけないことを考えると。 めまいを起こしそうになる。
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