そして誘惑はささやかれた。

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「それも、金があるか確かめるため。それで金がなかったら、適当に理由をつけて切り離すだけ。」 そう言って小さく笑った。 現実であるはずないって思ったけど。 リダイヤルの祐爾の発信を押すと、 『現在、使われておりません。』 冷たいアナウンスが現実だって言ってる。 私に残ったのは、本名じゃない。 祐爾と書かれた無意味な借用書と、1800万の借金。 それも、横領っていう犯罪のお金。 途方に暮れるしかないけど、そんな悠長なことは出来なくて。 会社に出社するたびに、いつバレるかと冷や冷やして。 「小松?」 そう、部長に名前を呼ばれるだけで、ドキッと緊張が体を駆け巡った。
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