そして誘惑はささやかれた。

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祐爾は店を辞めたと同時に、音信不通になった。 どうしていか分からなくて。 祐爾の店に行ったら 「ああ、結婚資金ができたとかで、辞めたよ。」 って。 「うそ…だって、私、結婚してないよ?」 一瞬、何のことだか分からなくて。 「幼なじみと結婚するって言ってたよ。」 そう言って笑った祐爾の同僚。 「でも、私、祐爾の両親にも会ってるし。」 「それ、アイツの常とう手段。最初は店に来させなくて、両親にも会わせて。合鍵ってダミーの部屋の鍵を渡すんだ。バッティングしても、両方に客って思わせればいいわけだし。」 「じゃあ、両親は偽物ってこと?」 「本物。両親もグルってことだよ。」 ウソのような現実が、次々に同僚の口から発せられる。 「じゃあ、160万。」 ポツリとつぶやいたのに。
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