エレベーター・ボーイ

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 小児科病棟は南の三階。ここからだと一度東棟の二階に降りてから、南棟に向かう階段を少しだけ上がっていくことになる。  けれど、『二』の数字が書かれたボタンを押そうとして、少年に慌てて止められた。 「違うよ、小児科じゃない。病室があるのは東の四階、内科の病棟だよ」 「内科? ふうん、ガールフレンドにでも会いたいのかと思ったんだけど、違うんだね」  とりあえず、言われたとおりに四階のボタンを押す。  すると間もなくエレベーターは機械音を立てはじめた。 「キミってば、すっかり僕が年下だと思ってるよね」  少年が後ろで不満そうに言った。  だって、年下じゃないの、どう見ても。でも、まあ確かにこの少年がいつから幽霊になったのか、私にはわからない。 「本当はいくつなの?」  素直に訊けば、返事がなかった。  そのうちに四階まで到着してしまって、私が振り向くより先に扉が開く。  口数が減った少年はなんだかすごく緊張しているように見えた。 「ついたけど、大丈夫? 行ける?」  つい私も心配するような口調になってしまう。  おかげでこっちまで緊張してきたみたい。  ふいに、少年のほうから右手を差し出されて、私は思わずまばたきをした。 「手、つないでくれないかな」と幽霊少年。  自分より(見た目は)うんと年下の男の子と、ましてや怖くもなんともない幽霊と手をつなぐくらい、私にとってはどうってことないことだったけど、はたして私が彼の差し出す右手に左手を乗せれば、私の手は彼の手の中をすり抜けて、お世辞にも手をつないでいるとは言い難い様になってしまった。  けれど少年はそれでも構わないらしい。  男らしく私の手を引くような形で握りしめた少年は、深呼吸して一歩二歩と前に進み出す。
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