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近ごろの残業続きで、気づかない間にひとりごとを言ってしまうくらいにほとほと疲れきっていた私は、その時本当に天井から返ってきた子どもの声に、聞こえた瞬間、「やった!」とガッツポーズをとるほど相当思考回路をやられていたんだと思う。
私はこの古くてこじんまりとしたエレベーターで「エレベーター・ボーイ」と我ながら素晴らしいネーミングセンスで命名した幽霊くんに前々から会ってみたくてたまらなかったのだ。
私の職場は、市内のわりと大きな総合急性期病院。三百床はある、第二次救急指定病院っていうことになっている(らしい。よくわからないけど)。
ただ、いかんせん建物が古い。東棟と南棟に分かれた「コ」の字型の建物は、東棟の方が後から建てられたものだからか、東と南、それぞれ天井の高さはばらばらで、いたるところ坂道や階段ばかり。病院内で迷わないようにと、外来診療のある一、二階は廊下のあちこちにカラフルな矢印が引っ張られていて、あっちは採血、こっちは検査科、放射線科は緑の点線……といった具合に、正直なところ私でさえも頭がこんがらがってしまう、迷路のような病院内だ。
そんな東棟六階の病棟で働く私は、毎日南棟と東棟、一階と六階を行ったり来たり。
最初の頃は、たしか頑張って階段を使っていた時期もあったような気がするけれど、今ではすっかりエレベーターのお世話になって、日頃の運動不足にさらに磨きをかけている。
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