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一階から六階まで、エレベーター内で一人きりになると、なんだか「わーっ」と叫びたくなってくる。
これはたぶん、トンネル内で「ヤッホー」と声を張り上げたくなるのと似てるんだと思う。
気を紛らわしたくなった時とか、職場の誰にも聞かれたくない愚痴を言いたくなった時とか、狭い箱の中で誰に言うでもなくしゃべってみる、秘密のストレス解消法。カラオケよりもずっとすっきりする。
叫ぶのに飽きたら、お次はここでだけ出会う、私にしか見えない創造された幽霊くんとのおしゃべり。
頭がいかれてるなんて言ってくれたって別に構わない。まあ、誰もいないところでやるんだから、誰に気づかれることもないし。
幽霊じゃなくたっていいんだけど、私のちっぽけな想像力では幽霊を創り出すだけで精一杯だから、せめてもとちょっと個性的なところもオプションで付け加えてみたりする。
私の愚痴にうんうんと頷いてくれたり、時には生意気なことを言ってきたりしてくれるような。
それも決まって男の子。かっこつけたがりの生意気な幽霊少年だ。
東棟のこのエレベーターにだけ住みついている、その名も「エレベーター・ボーイ」。
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