エレベーター・ボーイ

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 ああそうだ、やっぱり疲れていただけなのかもしれない。きっとそうだ。  ただのおかしな夢。そうは思ったりもしたけれど、その次に下の階へ降りなきゃいけないことがあった時には、どうしてもエレベーターを呼ぶ気がしなくて、階段を使うことにした。  東棟と南棟の、まるで迷路のように入り組んだ段のきっつい階段を。  ところがやっぱり急がなきゃいけない時は当然あって、ぜーぜーはーはー階段なんか使うのはもってのほか、エレベーターに乗りこむより他にないということは起こり得てしまう。  誰か乗ろうとする時を見計らって、さっと身体を紛れ込ませれば、ああこれはもう疲れのせいなんかにはできない。エレベーターのすみっこのほうで、人の後ろに隠れて例の幽霊少年がたたずんでいるのが目に入ってしまった。  けれど、今の幽霊は私に話しかける気がないらしい。  他に人がいるからだろうか。つんと澄ました顔をして、それからちらっと私の方を見ると、彼はそのまますっと見えなくなってしまった。  気付けば箱の中には私一人だけ。  どうやらいつの間にか他の乗客は途中で降りてしまったらしい。もしかして幽霊もどこかの階に降りたとか?
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