エレベーター・ボーイ

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 私はふむふむと頷く。  この古い病院だったら心霊的な噂のひとつやふたつ、当然あり得るだろうけど、この幽霊少年の話だと、必ずしも病院に居ついた幽霊がこの土地に縛られているってわけじゃなさそうだ。  それから私はエレベーター・ボーイの笑った顔をちらっとうかがった。  なんて良い笑顔だろう。この子、もし大人になれていたら、きっとイケメンの類に入っていたに違いない。  その少年が、笑顔を作ったまま、私の背後でこう告げる。 「自分のこと棚に上げてよく言うね」 「え?」  正面に振り返ると、彼はその表情を苦笑に変えた(苦笑なんてできるんだから、本当にこの子想像通りの生意気っぷり)。 「今日も残業なんでしょ? キミこそここに縛られてるみたいだなって」  ガシャン。  エレベーターが一階に到着した。扉が開けば身体は勝手に前へ出る。  狭いエレベーターから出たところで、もう一度振り返れば、少年の姿はまたも煙のように消えていた。  それも、「早く帰りなよ」っていう言葉を残してくれちゃって。  言われなくたって、今日はもう帰ります。  ……ところで、あれ?  エレベーター・ボーイはいったいどこに帰るというのだろう。
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