零話目 城崎さん

3/4
前へ
/22ページ
次へ
 そんな風に、まるで近所のスーパーにお菓子でも買いに行くかのような気軽さで、城崎さんは僕に云った。  正直言って、僕は怖い話の類が嫌いだ。  なぜか? 決まってる。怖いからだ。  読んだり聴いたりする時には、自分の隣に誰かがいるような気がするし、そんな時には決まって寒気が体にぞぞっと走る。  だって、実際にいるんだから。  なんだか良く分からない「モノ」が、いつの間にか隣にいる。  何をしてくる訳でもないが、なぜだか恐怖を感じる。  まあ――僕の話はともかく。  城崎さん。ああ、城崎さんだ。  地縛霊のお友達。  僕が彼女によって巻き込まれてしまった百物語。百の怪談話を語るお話は、まずこんな怪談から始まったのだった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加