壱話目 信じようと、信じまいと

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  「これは、友達の友達から聴いたお話なんだけど、なんかね、その子。ロアの手紙を受け取ったらしいのよ」  机に腰かけ、窓の外に映る夕暮れを見ながら、この百物語の言い出しっぺにして最初の語り手である城崎さんは言った。  幽霊にも友達はいるのである。  喩えば僕みたいに。 「………ロアの手紙? なんです? それ」 「うん。やっぱり知らないよね。  ロアの手紙って言うのは、色んな怪奇譚が集められた真っ白な封筒に入った差出人不明の手紙なんだけど――  それ、どうも危ないみたいなの」 「危ない、とは。つまりはただの怖い手紙でしょう?」 「まあ、要約するとそうなるんだけど……  ロアの手紙には色々守らなきゃいけないことがあってね……」  
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