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「…俺、人殺しだから…捕まるかな…?」
「…」
「…警察くるっ…!警察っ…」
「大丈夫、警察来ないから」
「…俺は捕まる…あいつからは逃げられない…」
彼の手が毛布から現れ、その手は俺の服を握りしめた。
「ん…?」
「…捕まりたくない…」
こうして彼は、ほんの少し、俺を求めてくれるようにもなった。
「大丈夫…絶対守るから…もう、大人の思い通りにはさせない」
「一人は嫌だ…一人は、嫌だ…」
安定剤、飲んだ方がいいかな。もう暫く様子を見るか。
彼の横に座り、そっと髪を撫でる。
「どこも痛くない?」
「頭…痛い…」
「じゃあ頭痛薬飲もっか」
「…いい…薬は、いいから…」
「本当に平気?」
「ん…」
「暑い?」
「あつ、い…」
「冷房いれたから、もう少しで涼しくなるよ」
「ありが、と…」
「ううん…」
まさか彼に初めて出会った頃、彼からありがとうという言葉が出てくるとは思っていなかった。
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