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「おはようございます」
と、受付の女の人に挨拶され、俺は軽く会釈した。どうせ心ん中で笑ってんだろ。今度はこの子が犠牲者か、とかって。
「お待ちしておりました。こちらへ」
若い警察官の後を追っていると、薄暗い廊下で足が止まった。
「一つ、注意点を言います。絶対に名前を間違わないでください。今の時間はゆうりくん、と話しかけてください。分からなくなったら、名前を教えてと聞けば言ってくれますので」
今の時間は?分からなくなったら?
「解離性障害…」
「…そうです。とりあえず今は普通の人格ですので、話を聞くなら今のうちだと思いますよ」
今のうちとか言われても。こちらです、と案内された大きなドア。
どの時間に何を診察すればいいかの紙だけを渡され、俺の荷物を持って警察官は消えていった。
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