イチ

5/16
前へ
/83ページ
次へ
重いドアを開けると、大きな部屋の片隅に彼はいた。二人は余裕で寝れるであろう大きなベッドの真ん中に、酸素マスクをつけていた。 部屋に響くのは、酸素マスクに酸素を送る機械がボコボコとなる音。 彼が、ゆうりくん… それはそれは綺麗な顔で。いかにもお坊ちゃんという感じだった。 「…こんどはきみが、ぼくのせんせ…?」 「ゆと…です」 眠っていると思ったけど、起きていたらしい。目が開かれ、こちらを向いた。 「…こんなとこ、きちゃ…いけないよ…」 「え…?」 「…ぼくはきみを…ころしてしまう…このてで…」 毛布に隠れていた腕がゆっくりと上がった。白くて細い、目を逸らしたくなるほど傷だらけの腕だった。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

197人が本棚に入れています
本棚に追加