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ゆとside
「…ちがっ、違うっ…」
「だい、じょーぶ…だいじょうぶ…」
相変わらず、彼の精神は不安定なままで。決して殴られることを拒まず、彼の気が戻るまで痛みに耐え、こうなると俺は、ぎゅっと彼を抱き締める。
やめて、離せ、そうもがく彼を、ぎゅっと抱きしめる。落ち着くまで、ずっと。
「はぁっ…はぁっ…」
「いい子いい子…」
落ち着くと彼は、死んだように動かなくなる。弱い呼吸だけが耳に届く。
こてん。と、彼の首が腕に当たり、その温かさが直に伝わる。その温かさに違和感を覚え、テーブルに置いてあった体温計に手を伸ばした。
「…熱…」
どうして今まで気がつかなかったんだろう。すぐに氷枕を用意し頭の下に置いて、冷たいタオルもおでこに乗せた。
だから今日は落ち着くのに時間がかかったのだろうか。
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