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顔を合わせれば、いつも茶化してしまうから・・・。
『文学部』という言語を学ぶための学部に所属していながらも、俺は思いを言葉にする事が苦手だった。
それ故にいつも、美波に対してはついクールに見せようとカッコつけてしまい、俺自身そんなに他人と馴染めるタイプではないはずなのに、つい場を盛り上げようと頑張ってしまっていた。
きっと彼女は、俺の事を明るいリーダー格だと思っているのだろう。
だからいつも、何か思う事があれば真っ先に俺に話を振ってくる。
弁当を食べ終えて片付けを始めた彼女に、さっきの問いをそのまま返してみる。
「なぁ、美波はあの話、信じてるのか?」
きっと誰もが、まだ半信半疑。
美波もまた、『もしかして』という不安があるから父の元へ帰ると言ったのだろう。
唐突な俺の聞き返しに、美波はきょとんとした表情を浮かべる。
そして片付けの手を止めて少し考えた後、彼女は俺にこう返答を述べた。
「信じない・・・、いや、信じたくない・・・かな?」
俺だって、同じ思いだよ・・・って、この時言えればいいのに。
その言葉すら言い出せない俺は、やっぱりチャンスを逃している・・・。
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