Beloved

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 ◆◆◆  朝が過ぎ、昼になる頃、12月の太陽は淡い光。独特の開閉音に伴い、ぶぉんとモーターが、ひと鳴り。 「やっぱり」  屈みながら覗き込んだ美樹は呟いた。 「今日の晩御飯は玉子にしようと思っていたのに……」 『玉子焼き? 世間では、これをスクランブルエッグって言うんだよ』 「いいの! うちの実家ではこれが玉子焼きなの!」  頬を膨らませながら、唇をとがらせる。ついばむように指先で摘ままれると、自然に笑みがこぼれてしまった。 「ちょっと買いに行ってくるわね」  築60年を越す団地の一階にある住み慣れた我が家。きいきいと床を軋ませながら、美樹は玄関へと進む。 『気を付けて』  見送りの声に頷くと、最期の日を迎える世界へ、ゆっくりと美樹は踏み出した。
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