Beloved

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 ◆◆◆  歩いて10分程の距離にある、長年通い慣れたスーパーへと美樹は着いた。 「こんな日なのに混んでいるなんて」  そこで初めて今日がクリスマスなのだと、美樹は思い出した。  冷え込みそうな体を丸めて歩いていたから、見落としていた。  導かれるように顔を上げれば、七色に点滅するオーナメント。ぞんざいに飾り立てられたツリーでも美樹の胸の奥は、じんと温かくなった。 「お菓子、買っていい?」 「おお、いいぞっ! こっからここまで全部でもっ!」  歓声を上げる女の子に目を細めながら、お父さんは一生懸命に笑顔を作ろうとしていた。  切ない思いを抱え、にぎわう人々の間を縫いながら目的の売場を目指す。  やっと到着した美樹は、小さく目を見張った。 「すみませーん! ここ、ここにあるの、全部下さいっ!」 「え? 全部、ですか?」  少年と店員のやり取りに、美樹は近付きながらも慌て叫ぶ。 「卵っ!」 「えっ?」 「え?」  少年と店員の呟きが、見事にシンクロした。
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